ドラマ【テセウスの船】は同名漫画を元に作られた時空を越えたファンタジーミステリー。
このタイトル名を見た瞬間、いったいこれはどういう意味なんだろうと疑問が湧きました。
テセウスの船?
あまり聞き慣れない言葉ですが、この物語のタイトル名にふさわしく作者の意図を表すのにぴったりの言葉!
ドラマ【テセウスの船】のタイトル名に込められた作者の伝えたかったことを、原作ネタバレから考察していきます!
目次
テセウスの船のタイトルの意味とは?
【テセウスの船】はオリジナルの言葉ではなく実際にある言葉でパラドックスのひとつだと言われています。
パラドックスって言われてもいまいちピンとこないですよね^^;
パラドックスとは【逆説】【ジレンマ】【矛盾】を表し、定説に反したことを意味する言葉です。
▼わかりやすい例でいうとこちらのことわざ!
- 急がば回れ
- 可愛い子には旅させよ
- 負けるが勝ち
急いでいるのに遠回りしないといけないとか、可愛い子に旅をさせたり負けた方が勝ちというのはいずれも定説に逆らっていますよね。
本来なら「急いでいれば近道をしたい」「可愛い子はずっとそばに置いておきたい」「負けは負け」となるところ、これらのことわざには反対の意図が込められています。
急いで危険がある近道を通るよりも、遠回りだけど安全な道を通った方が確実。
大切な我が子だからこそ敢えて甘やかさず、厳しい環境で経験を積ませて人として成長させたい。
その場では負けたほうが不利に見えるかもしれないが、後々考えるとその負けが勝ちにつながるかもしれない。
一見間違っているようで間違っていないというのがパラドックス。
またパラドックスには正しいようで正しくないという意味も含まれています。
つまり見かけ上だけで物事を正しく判断していいのかということ。
この世には多くのパラドックスが存在し、私達は既に知らずして多くのパラドックスに遭遇しています。
そのパラドックスのひとつである【テセウスの船】は後者(正しいようで正しくない)の意味を表しています。
これはギリシャ神話でも有名なお話のひとつです。
国宝の修復作業を経て完成された建造物などがいい例で、見た目は同じかもしれませんが、修復を繰り返すたびに材料を取り替えていったら果たして最初と同じものなのか?
少しずつ修復していけばまだ違和感も少ないでしょうが、これが全て形がなくなった状態から修復を始めたとすればさらに違和感ありまくりです。
これを人に例えるとどうでしょうか?
日々人の体は細胞が生まれ変わっていますが、赤の他人になるわけではなく細胞が変わっても同じ人間のままです。
ここで矛盾が生じます。
同じだけど同じじゃない……。
これこそがこの作品の真意であり、物語の核心をついているではないかと思われます。
【テセウスの船】タイムスリップで人生が入れ替わる?
作品【テセウスの船】とは主人公田村心(竹内涼真)が過去にタイムスリップし、悲しい過去を塗り替えて新しい人生を取り戻す物語です。
この物語の中のテセウスの船とは物ではなく人のことを指し、心が過去に戻ったことで未来が変わり、それに関わった人の人生も大きく変わっていきます。
▼注目して頂きたいのがこちらの7人の登場人物!!
- 田村心
- 田村由紀
- 佐野文吾
- 佐野和子
- 佐野鈴
- 木村さつき
- 加藤みきお
①田村心
この物語の主人公であり、過去に戻ったことで自分の身の回りのことが大きく変化していきます。
生まれる前から父親が犯罪者として捕まってしまったため、世間では自分の正体を隠しながら常にビクビクした人生を送ってきた心。
しかし、過去を変えたことで真実を知り、自分自身も生まれ変わり新しい人生を歩んでいきます。
②田村由紀(岸田由紀)
心が過去にタイムスリップしたことで心の妻であった由紀との関係も大きく変わり始めます。
現代では出産で命を落としてしまう由紀。
しかし、心が過去から現代に戻ってくると、由紀は生きていました!!
しかも赤の他人となっており、二人は出会っていなかったことに……。
心と由紀はこのままの関係で終わるのか?
それとも再び絆を強めていくのか?
果たして二人にはどんな未来が待ち受けているのかにも注目していただきたいです。
③佐野文吾
正義感が強く警察官であった佐野文吾(鈴木亮平)は、31年前に起きた毒物混入事件の犯人として捕まってしまいます。
既に死刑判決を受け拘置所で無実を訴え続けていますが、家族にも見離され誰一人自分の味方になる者は現われず孤独な人生を送っていました。
長い月日が流れても世間の声は変わらず、凶悪犯として非難され続けていたのです。
しかし、心が過去に戻ったことで彼の人生も少しずつ変わろうとしていました。
④佐野和子(田村和子)
佐野和子は心の母親で文吾の妻。
夫が捕まってしまったため、大変な苦労をしながら女手ひとつで3人の子供を育て上げます。
心の名字である田村は母の姓。
もともとは元気いっぱいで、いかにもパワフル母ちゃんという言葉が似合いそうな明るい人柄だった和子。
しかし、世間からは加害者家族として白い目で見られ続けた結果、暗い性格となり自分の感情を抑えて人様の顔色ばかり伺う人になってしまったのです。
心が過去を変えたことで、和子の人生もまた大きく変わり始めます。
⑤佐野鈴
佐野鈴は心の12歳離れた姉で、鈴もまた心同様に辛い人生を送っていました。
しかし、大人になった今では居所さえわからず完全に音信不通状態!!
鈴の顔には子供の頃に負った大きなアザがありましたが、心がタイムスリップして彼女を助けたことでアザがなくなります。
過去に戻る前は一切連絡を取り合っていなかった二人。
しかし、現代に戻ってくると過去が変わったことで二人は再会することに!
鈴の人生もまた大きく変わり、彼女はこの物語のキーパーソンとも言える人物でもあります。
⑥木村さつき
木村さつきは小学校の教師で、鈴のクラスの担任を受け持っていました。
美人で優しく生徒からも人気のある先生。
31年前の毒殺混入事件の被害者だったさつき。
しかし、心がタイムスリップして過去を変えたことで、別の人生を送ることになります。
ある意味この登場人物の中で一番悲しい運命をたどる人物なのかもしれません。
⑦加藤みきお
加藤みきおは鈴の同級生。
先生やクラスメイトとの関係も良好で、正義感も強く学級委員長みたいな存在。
小樽からきた転校生で祖母と二人暮らし。
心が過去を変えたことで、みきおの人生もまた大きく変わり始めます。
彼もまた物語の鍵を握る人物のひとりです。
【テセウスの船】のタイトル名に込められた作者の意図とは?
姿かたちは同じなのに過去が変わったことで中身が別人となり、全く違う人生を歩んでいくことになる登場人物達。
同じだけど同じじゃない……。
登場人物を船に例え、見た目は一緒だけど全く別の人生を送ることになるというところが作者の意図する【テセウスの船】ではないかと結論づけました!
特に注目すべき存在は物語のキーパーソンである鈴!!
- 現代の鈴
- 31年前の鈴
- 心が現代に戻ってきたときの鈴
心が過去を変えたことで鈴の身に起こることも大きく変化し、見た目は同じ鈴でも歩んだ道は全く別物。
そしてそこには犯人につながる重要な手がかりが隠されています。
犯人にはずっと手に入れたいものがありました。
しかし、手に入らなかった……。
これこそがこの物語の核心とも言えるパラドックスともいえる部分で、作者が一番伝えたかったことなのかもしれません。
まとめ
以上、ドラマ【テセウスの船】のタイトルの意味やこのタイトル名に込められた作者の意図についてお伝えしました。
パラドックスと聞いてもいまいちピンときませんでしたが、原作を読み終えた後はなぜ作者がこのタイトル名をつけたのか納得がいきました。
普段聞き慣れない言葉ですが、この作品を通して意外と私達の身の回りにはパラドックスがあふれているんだということを改めて実感しています。
【テセウスの船】はタイトルの意味や作者の意図を知ることで、さらに深みが増す作品です。